第6回GPC環境勉強会:『環境都市としてのオアフ』
あるハワイについての座談会にて。
ある日本のメディアグループと「ハワイ」という観光地についての座談会をしたことがあります。その席で興味深い多くの意見を聞くことができました。ハワイの美しい海、温暖な気候など、美しいハワイの自然環境についての意見が多く出ました。これらは世界中の人が感じるハワイの魅力であり、観光都市として大切にしたい部分です。
反面、「ハワイってエコじゃないよね…」という意見を聞くことができました。それは、巨大なフードコートで、たくさんの人々が発泡スチロールのお皿で食事をし、プラスチックのカップでドリンクを飲んでいる。全て使い捨てのもので、食べ終わったらすぐにゴミになってしまう容器である。さらに破棄するゴミ箱も一つしかなく、とくに分別されてはいない事実を目の当たりにして驚いたという。また、滞在先のホテル内のゴミ箱もひとつしかなく、分別が進んでいる他の観光都市のホテルや日本の状況とは異なり、エコに遅れているハワイを感じたという意見でした。実際に私もカリフォルニアの空港やホテルで、ゴミを分別している状況を見てきました。また、このことから日本のゴミ分別の実態も調査してみましたが、現在のハワイとは比較にならないほど進んだ現状を知りました。
(写真資料:三枝さん撮影)
カリフォルニアのホテル通路にあったゴミ箱(左)と室内のゴミ箱(右)
ハワイ旅行者の現状と環境。
現在のハワイ観光の状況を簡単に説明します。渡航者数は現在、状況の回復が見られた昨年レベルで推移していますが、渡航者あたりの消費金額は、依然として低いレベルで推移しています。渡航者数は増加傾向にあるが、渡航者の消費金額が減少している、という現状にはいくつかの理由が考えられるのですが、今日の勉強会のテーマである「環境」も大きな要因のヒトツになっていると思います。日本では消費の潮流として「4E消費」というキーワードが盛んに話されています。それは、Economy(お得感がある)、Ecology(環境に配慮している)、Easy(安心・簡単に購入できる)そしてEmotional(わくわくする)という消費のキーワードです。特にF1・M1と呼ばれる20歳から34歳までの男女の消費傾向には、4Eへの意識が不可欠といわれています。
話をハワイの観光に戻してみたいと思います。渡航者数は増加傾向にあると話しました。その渡航者の中身を見てみると、新婚旅行者や学生旅行者といったいわゆる「1stタイマー」が減少し、リピーターが増えています。また、コンベンションや修学旅行など、団体旅行者も減少傾向にあります。つまり、大きな消費を生む可能性がある、F1・M1層の旅行者が減少しているという見方ができます。「4E消費」というキーワードでハワイ旅行を考えた場合、美しい自然環境に溢れるハワイですが、「環境に配慮している観光都市」として見てもらえていないのかもしれません。
観光関係者へのヒヤリング。
いくつかの資料を参考にして、オアフの観光業に携わる方々へ環境に関するヒヤリングをしたところ、環境に対する意識が環境先進国とは格段の差があることに気がつきました。現在ハワイのホテルで行われている主な環境活動は、2点あります。1つは、できるだけ水資源を無駄にしないよう呼びかけること。2つめに、客室のリネン清掃を必要以上に行われないよう呼びかけることです。どちらも水資源を有効に利用する環境活動です。
一方、カリフォルニアや日本で実施されているホテルのゴミ分別に関して、分別を実施しているホテルはほんのわずかでした。ホテル関係者も努力をしていないわけではなく、他の州や環境先進国の状況を知り、ホテル単位で環境について盛んに話されています。分別に必要なインフラ整備や、分別をするホテルの清掃担当者の多くは労働組合に所属している為、理解や協力を得る必要があります。
エコツーリズム。
「エコツーリズム」という言葉をご存知と思います。地域の環境や生活や文化を破壊せずに自然や文化に触れ、それらを学ぶことを目的に行うツアーを意味しますつ言葉です。ハワイにはイルカと泳いだりクジラを見に行くマリン系のツアーや、ハワイの文化を山を歩くツアーなどたくさんの自然に触れるオプショナルツアーがあります。このようなツアーはネイチャーツアーに区分され、「エコツーリズム」とは異なり「自然と楽しむ」ことが目的になっています。しかし、お客さんからのニーズやライフワークとして「自然と触れる・遊ぶ」という域を脱し、ハワイの自然保全や環境保護を重視し、観光客へ遊びながら自然の大切さを伝えていく「エコツーリズム」へと発展しているグループもいます。彼らはある意味では教育的な側面を持ったグループであり、「環境に配慮した観光」を先導しているグループと言えるでしょう。
グリーンミーティング。
コンベンション(見本市)やカンファレンスは、世界中から多くの人がやって来ます。そのコンベンションを行う都市を選択する際の基準に、「環境」を取り入れようという動きが活発になって来ています。グリーンミーティングというオーガナイゼーションが中心に動いているのですが、ここ数年のうちに明確な選択基準が打ち出されるそうです。コンベンションはたくさんの人・物・お金が動くイベントですから、世界中のコンベンションシティーがグリーンミーティングの動向に注目し、今後彼らのスタンダードが世界基準になるかも知れません。また、2011年にAPEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議を、オバマ大統領の出身地であるハワイで開催することが決まっています。各国のリーダーや報道関係者がハワイにやって来るこのイベントが、環境都市として再生する大きなチャンスだと思っています。
最後に。
観光局としては、より魅力のあるハワイを打ち出す必要があります。その為にも目先のことに力を注ぐのではなく、長く大きな視野で環境に配慮した観光都市へシフトする必要があると思います。「環境にお金や時間をつぎ込めば観光客が増える」という考え方ではなく、「環境にお金や時間をつぎ込まないと、観光客は減ってしまう」という危機感を持つことから始めなければならないと思います。ゴミ問題に関してはインフラの整備や従業員への教育や理解、労働組合との交渉など、話し合いで解決する問題です。環境に配慮したディスティネーションとしての観光業を発展させる為にどうしたらいいか、多くの人と共に学びながら、環境にいい開発をしていきたいと思っています。
第6回GPC環境勉強会:『環境都市としてのオアフ』にご来場、ありがとうございました。次回の勉強会も素敵なゲストを招いて、ハワイの環境について考えていきたいと思います。GPC環境勉強会は、どなたでもご参加いただけます。ぜひ、ご参加ください!
*勉強会に参加し、終わりにライブをしてくださったかのんぷ♪さん、本当にありがとうございました。
Kenさん、とてもわかりやすいレポートを有難うございました。
三枝さん、ご多忙の中意義あるレクチャーをしていただき感謝します。
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2011年にAPECがオバマ大統領出身地ハワイで開催されるのは、不況にあえいできた観光業界はじめハワイの経済にとって大変喜ばしいことですね。一方でそれは、単なるお祭り的盛り上がりで終わるのか、あるいは今後ハワイが、自然環境を含めて真の意味で持続可能な道を進むのか、-- の試金石になるのではないでしょうか。
すでにハワイでも「エコ」とか「ハワイの環境」というキーワードだけを利用したマーケティング優先のビジネスもたくさん出ていますし、私たちGPCは地道に冷静に事実や現象を見極めていかなければならない、という思いを再度強くしました。
どうも有難うございました。
こんにちは。
日本や欧州の数カ国ではカーボンフットプリントの表示を始めていますが、米国はどうなのでしょう?
実際には日本人でも知らない人は多いと思いますが、まず環境やエコ問題に興味を持つ事が大切です。
その意味では商品(缶やプラ(スチロール)容器)に対してのカーボンラベリング=二酸化炭素の可視化はハワイでは良いのかも知れません。
特に発泡スチロールの容器はハワイでは問題だと思います。
リサイクルは可能です。日本では50%位(多分)はリサイクルしていると思います。
但し、粉砕→融解と言った作業のため特に融解においては熱エネルギーが必要でこれも考えると環境には良くない事です。
スチロールを使わないようにすればいいですが、かなり難しいですね。せめて容器にカーボンラベリングを付けて、その一つの容器が作られてから焼却されるまでに、どれくらいのCO2が出るか・・・目に見えるようにする事も大切な気がします。
発泡スチロールの代替品として今後考えるのがカーボンニュートラルであるポリ乳酸樹脂(バイオプラスチック)です。
トウモロコシなどの植物から出来ており、いずれは水や二酸化炭素に分解する事が可能です。
まァ、合成の際にはやはりエネルギー(CO2排出)は必要ですが・・・
GPCの活動頑張って下さい^^
「二酸化炭素に分解」の補足
ポリ乳酸は微生物によって最終的に二酸化炭素へ分解されて大気中に放出されるそうです。植物は大気中の二酸化炭素を吸収してデンプンを合成しているため、トータルで見て地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の量を増やすことがない、と言われています。
H!roさん、GPCへようこそ。
カーボンフットプリント&カーボンオフセットが、日本で流行っていることは喜ばしいことですね。カーボンフットプリント&カーボンオフセットが、アメリカではどこまで浸透しているのでしょうね…..。「おっ、カーボンオフセット!」という具合には、感じたことがありませんので気にして生活してみます!
たくさんの情報をありがとうございました。