GPC News
環境エッセイ
『癌細胞と環境問題について』
by 有馬 広海
私の父親は肺癌で永眠したが、すべてのことには意味があり、自分が癌になったのも、きっと何かのメッセージなのだろうと言っていた。父が言う「癌からのメッセージ」とは、何なのかを考えてみた。
癌は現代人の最大の死因であるが、ほとんどの場合、癌は高齢者に圧倒的に多い傾向にある。だから、これはむしろ人間が長生きをするようになったためとも考えられる。実は、この長生きをすることは癌細胞の特徴の一つである。他の細胞と比べてなかなか死なないから、大きな集塊を形成してしまう。日本語の「癌」の語源は「岩」で、岩のようにかたく発育した癌組織からつけられたものである。英語でcancer,ドイツ語ではKrebsだが、これは癌の周囲に見られる怒張した血管の様子が「蟹」に似ている事からつけられた。栄養を与える血管を強引に引き込む癌細胞は、食料を運ぶ道路を張り巡らせる人間とそっくりである。
シャーレーなどで培養すると、正常細胞が水平にいっぱいに広がると増殖を停止するのに、癌細胞では増殖を続け何層にも重なるという特徴を示す。これは世界的に見ると人口増加を抑制せずに、たくさんの高層ビルを建てて住んでいる現代人と同じようなものではないのだろうか?癌細胞は異常に増殖し、環境を悪化させて、最後はその母体と共に自らを死滅させる運命にある。これは人間も同じかもしれない。人類の宇宙開発の目的とは、地球が住めないほどに汚染された時には、選ばれた小数の人たちを移住させるためではないのだろうか?まさに、癌細胞が他に転移する時期をうかがっているかのようである。人類はいま地球の表面に広がり、さまざまな建造物を作り、その代謝産物は海や大気を汚染して多くの他の生物を絶滅させている。癌細胞も成長するにつれて、まわりの環境を変化させ組織を破壊し、また新しい環境へと転移を繰り返して増殖する。さらに癌細胞の発育に伴って人体が発熱するように、地球は温暖化している。この地球温暖化をはじめとして、さまざまな環境問題が提示されているのが現代である。これらを総合して考えてみると、「人間とは地球の癌細胞」であり、地球環境を破壊していく性質があるのは当然かもしれない。そうだとすれば、果たしてこれを治す薬はあるのだろうか?
オゾンホールからの多量の紫外線は生物の突然変異を加速させ、新種の細菌やウイルスを出現させやすくし、また癌を増加させている。世界人口を養うための食料や水、エネルギー、それらを含んだ環境のすべてが限界に近づいているいま、これらが人間の寿命を短縮してくれなかったら、その人口増加を抑えることができず早くに人類は滅亡の道をたどるだろう。未来を考えるとき、どうしたら人類は自己崩壊をくい止められるのだろうか?「癌細胞からのメッセージ」があるとすれば、自分の増殖や行動をコントロールできなければ、人類も自分たちと同じように、その母体(地球)と共にやがて絶滅する運命にあることを伝えているように思える。癌細胞と環境問題は深い底で繋がり合っている同じ問題ではないのかと、最後に父が私に教えてくれたような気がしてならない。
有馬 広海 | Hiromi Arima
友人たちが、次々と運転免許を取る中で、いくら便利でも、青い空に排気ガスを出す自動車がどうしても好きになれず、未だに免許を持っていない。父が肺癌で他界したのをきっかけに、煙草は体内の大気汚染だと考える。また、石炭や石油といった古代の生物からの贈り物を狂ったように使い尽くそうとする人間を「地球の癌細胞」と認識する。そんな人間の心が知りたくて、大学院(教育学研究科 心理専攻)に進学し、「教育心理学修士号」と「産業カウンセラー」の資格を取る。細胞を実際に顕微鏡で見て、癌細胞を発見する「細胞検査士」「国際細胞検査士」の資格を取る。現在、総合病院の「環境管理センター」に勤務。
環境エッセイを募集しています。
ガイアパシフィックセンターでは、私たちのサイトや広報活動で使用させていただける環境エッセイを募集しています。エッセイのテーマは自由ですが「地球が一つの生命体であり、人間もその一部として生かされている」というガイアパシフィックセンターの目的に即したもの限らせていただきます。地球環境に関する身近に起きた出来事や、あなたの主張をエッセイに仕上げてご投稿ください。
応募のきまり
1)応募作品は、メールのテキストもしくはWord書類添付の上、
Eメール(info@gaiapacific.org)までご応募ください。
2)文字数は2,000文字以内を推奨します。
3)筆者のお名前・ご連絡先、著者のプロフィール(300字程度)を明記してください。
4)ご応募いただいた作品は、GPCで選考させていただきます。
5)使用させていただくエッセイには、筆者のクレジットを挿入させていただきます。
みなさまのご応募、お待ちしております。
